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店主のつれづれなるままに コアアートスクエアからのお知らせ

2010年06月18日

中川一政の言葉

音楽にかかわるとても大切なことを、ときに音楽畑以外のひとから教わることはよくあります。中川一政という画家もその一人です。彼にはたくさんのエッセイがあり『中川一政文集』として全10巻にまとめられてもいます。どの言葉も味わい深いのですが、たとえばこんな含みの多いなにげない文章にぶつかります。

「彼らは肉眼をたよって見えるものの勉強をしている。見えないものの勉強はしていない」と。

学校で技術を学び、表面の色や形だけにとらわれて対象を心眼で捉えないことを批判します。またこんなふうにも言います。

「他人の技術は役に立たない。技術は自分の目から生まれるのだ。しかしこれが自分の技術だと思ったら、それは死んでいる技術だ」そしてさらに「上手でも死んでいる画がある。下手でも生きている画がある」、「志はもと士の心ではなく、之と心から出来た文字で、即ち心が之(行)くという意義で、心が方向を持つという意義である。(中略)志というものが言葉になれば詩になり、耳に行けば音楽になり、目に行けば画になる」と。

心が方向を持つとは、心が動く、すなわち感動ということです。文学者、音楽家、画家となれば志の分業ではあるが、画かきは画だけかいていればよいかといえばそうではなく、むしろ画かきになってしまってはいけない、画かきが画をかくのではなく、人間が画をかくのでなければいけないと言います。画かきは人間の全部でなくてはならないのです。音楽家もまた然りでしょう。

かのセザンヌも「感動を原理としない芸術は、芸術ではない!」と叫びます。技術も大事には違いないが、対象を深く見つめ、ひとりの人間として感動する心こそ大切ということなのでしょう。

何事をなすにも自得の精神が肝要、とはやはり中川一政の言葉ですが、もがきながら自らの表現を模索し続けた人たちの言葉はずしりと重く心に響きます。肝に銘じつつ音楽に向き合いたいものです。

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