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店主のつれづれなるままに コアアートスクエアからのお知らせ

2009年09月28日

庄野潤三さんを偲んで

作家の庄野潤三さんが亡くなった。一度お会いしたいと思っていた方だった。
きょうは告別式。庄野さんが脳梗塞で倒れられて入院中だった三年前に「ハーモニカマガジン」に書いた原稿を再録し、庄野さんのご冥福をお祈りしようと思う。

『庄野家訪問』

多摩丘陵の小高い丘のてっぺんに作家、庄野潤三さんの家がある。四周を一望に見下ろせる天に近い「山の上」だ。庄野さんの作品で描かれる、めじろやつぐみなどもやってくるそう広くもないが緑いっぱいの庭。しっとりと落ち着いた風情の和風の家。庄野さんたち老夫婦の幸せにあふれた暮らしぶりがうかがえる。

庄野さんの作品にはよくハーモニカを吹く場面が登場する。夜一日を終えて、あとは風呂に入って寝るだけというときに、齢八十を超える庄野さんがハーモニカを吹き、そばで奥さまが時には歌詞を口ずさみながらそれを聴く。「早春賦」であったり「朧月夜」であったり「赤とんぼ」であったりする。もう何度となく繰り返される同じような日常、けれど二度と戻ることのないかけがえのない一刻、一刻。そんな老夫婦の穏やかでふくよかな日常が綴られる。読むと心が温まる。

伺ったときはあいにくお留守。玄関先に差し上げようとハーモニカと手紙を置いて帰宅した。そしたらすぐに奥さまから手紙がきた。
「丁度、病院から戻りましたら、お玄関の桜の切り株の上に、門灯の光にてらされて美しいものが待っていて下さいました」
万年筆で書かれた美しい文字、美しいことば。もう感激だった。

庄野さんは昨年から病に襲われて入院されているという。奥様によればハーモニカを吹くことはまだできないが、いつもハーモニカのCDを聴いているという。早く全快されてハーモニカを吹く日々をまた作品にしていただきたいと切に願うばかりだ。

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